※今回は実車の写真がありません。
試乗時間が限られており、走行インプレッションを優先したため、撮影まで手が回らなかったのが正直なところです。
その分、この記事は「見た目」よりも「走って感じたこと」に集中した内容になっています。
そしてもうひとつ。
Speed Triple 1200 RR はすでに生産終了モデルです。
今後、試乗車自体が徐々に姿を消していくことを考えると、今回このバイクに乗れたことは、かなり運が良かったと思います。
概要
Speed Triple 1200 RR を初めて目の前にしたとき、率直に「これはSpeed Tripleなのか?」と感じました。
丸目を思わせるクラシカルなカウル、セパレートハンドル、シングルシート風のリア。
従来のSpeed Tripleが持つストリートファイター的な文脈から、明らかに外れた存在です。
しかし走り出してすぐ、その違和感は消えました。
このバイクは“変わり種”ではなく、徹底的に作り込まれた結果として、こうなった一台です。
ポジション:構えて乗るが、拒絶はしない
跨って最初に感じたのは、見た目ほど極端ではない前傾姿勢でした。
確かにセパハンで、上体は自然と前に倒れますが、スーパースポーツのように体を折りたたむほどではありません。
信号待ちでは上体を起こす余裕があり、街中のストップ&ゴーでも「耐えられない」と感じるほどではありませんでした。
一方で、気を抜いて乗れるポジションでもありません。
体幹で支える意識は常に必要で、バイクと向き合っている感覚があります。
エンジン:街中でも隠しきれない“格”
1158ccの3気筒エンジンは、街中でも圧倒的な余裕を感じさせます。
2000rpm付近からトルクが厚く、スロットルをわずかに開けるだけで前に出る。
特筆すべきは、速さの出方が非常に上品なことです。
大排気量らしい力強さはありますが、荒々しさはありません。
電子制御の完成度が高く、「気を抜くと振り回される」という緊張感は想像より少なかったです。
回転を上げると、一気に別の表情を見せます。
加速は凄まじいですが、恐怖よりも快感が先に来るタイプです。
足まわり:速度域が上がるほど信頼が増す
Öhlins Smart EC 2.0の足まわりは、街中ではやや硬質に感じます。
路面状況をはっきり伝えてくるため、快適性を最優先にする人には少し落ち着かないかもしれません。
しかしスピードが上がると印象は一変します。
コーナー進入時の姿勢変化が穏やかで、旋回中の安定感が非常に高い。
「もっといける」とバイクのほうから余裕を示してくる感覚があり、この足まわりがあるからこそ、RRの前傾ポジションは成立しているのだと感じました。
レーキ:強力だが、常にコントローラブル
Brembo Stylemaのブレーキは、制動力よりも安心感が印象的です。
初期制動が唐突ではなく、握った分だけきちんと減速してくれます。
街中でも神経質にならずに使え、ワインディングでは思った通りに速度をコントロールできます。
このブレーキがあることで、走り全体に余裕が生まれます。
片持ちスイングアーム:RRのエロティシズムは後ろ姿にある
Speed Triple 1200 RRの色気は、間違いなくリアにあります。
片持ちスイングアームによって露わになるホイールの片面、そこに生まれる余白と構造美。
性能面だけを見れば、必須の構造ではありません。
それでもこの形式を採用したのは、このバイクを理屈ではなく感情で選ばせるためだと感じます。
走っていない時間でさえ、後ろ姿を眺めてしまう。
そんな官能性が、このRRには確かにあります。
街乗りでどこまで我慢できるか(実用性編)
結論として、Speed Triple 1200 RRは、我慢が必要だが、想像よりずっと現実的です。
渋滞では前傾姿勢がじわじわ効きますし、低速Uターンでは集中力が求められます。
決して気軽な足ではありません。
ただし、
- エンジンの熱は許容範囲
- 低速トルクが厚く扱いやすい
- 電子制御が自然にアシストしてくれる
これらのおかげで、「無理だ」と感じる場面は少なかったです。
日常で使える非日常という表現が、最もしっくりきます。
総評:もう新車で乗れない一台だからこそ
Speed Triple 1200 RRは、ネイキッドでもスーパースポーツでもありません。
前傾姿勢を受け入れ、性能を持て余すことすら楽しめる人に向けた、極めて大人なバイクです。
生産終了となった今、このバイクに触れられる機会は確実に減っていきます。
だからこそ、今回試乗できたこと自体が幸運でした。
写真はありませんが、走って感じた記憶は、強く残る一台です。
